Midori Nishiura
THE SPACE
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~NASAは独立記念日がお好き?~

2015年7月4日

nasa

 1997年3月から11月まで、NASA(米国航空宇宙局)のJPL(ジェット推進研究所)にて客員科学者として過ごしていた。たまたま、Mars Pathfinder(マーズ・パスファインダ)という火星探査機が火星着陸をする時期と重なっていた。NASAは7月4日の独立記念日に火星タッチダウンだと宣伝していた。自分なりに、マーズ・パスファインダの飛行計画について検討してみると、7月4日から少し日程をずらした方が、技術的には良いのではないかとの結論に達した。そこに運悪く(運良く?)、日本のある新聞記者から、「マーズ・パスファインダの火星到着日はどうやって決めているのか」という取材が入り、「計算してみたけれど、最適な日からは、ちょっとずれている気がする。きっと独立記念日に合わせたのだと思う」と話すと、何とそのコメントが新聞に掲載されることになった。私は、NASAの反応を心配し始めた。
 その後、JPLの担当者に会う機会があり、その指摘を伝えたところ、ニヤッとしたあと満面の笑みで、「確かにそうだよ、7月4日にした方が米国民が喜んでくれるからいいんだ。NASAにとっては大事なことなんだよ」とのこと。ホッとしたのはもちろん、同時に、大規模プロジェクトを、技術だけではなく、粋に演出する姿勢に感心したのであった。
 つい最近(2015年)、NASAの局長とお話する機会があったが、「NASAは独立記念日などに無理やり大事なイベントを合わせるのが得意だね。」と指摘したら、ニヤッとして、その通りだと答えていた。

18年前にみた、あの「ニヤッとした」表情と同じ表情だった。実に嬉しそうだった。

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